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ホーチミン1区で見たヘム(裏路地)。ビルとビルの隙間に息づく生活

ホーチミン1区、ブイビエン地区のヘム 観光・体験
観光・体験

ホーチミンにある無数の小さな脇道、これらをベトナム語で「ヘム(Hẻm)」と言います。

ビルとビルの隙間にある細い道
観光で歩いていると、一度は目にしたことがあるはずです。
または見過ごして通り過ぎているかもしれません。

ビルの間に出来たヘムの入り口
ブイビエン通りに繋がる、一本道のヘム

先日ブイビエンの街をGoogleマップを頼りに歩いていて、「ヘム」の中へ迷い込みました。

ようやく通りへ抜け出たとき、まるで異空間から現実に戻ってきたような気がしました。
その後、どうしても気になってしまい、ヘムについて調べてみることにしました。


有機的に発生した細い路地

ヘムは計画的ではなく、歴史的な移住と定住のプロセスで有機的に成長しました。

市民の約80%が生活するヘム

ホーチミン1区、ブイビエン地区のヘム

ヘムは「行政が作った道」ではなく、「人々が生きるために削り出した隙間」です。

歴史的な節目ごとに起きた人口移動が、ヘムの拡大を加速させました。

2026年現在も、ホーチミン市民の約80%がヘムの中で暮らしていると言われています。


ヘムはいつできたの?

1954年のジュネーヴ協定以降、北部から南部への大規模な人口移動が起こりました。
さらに1986年、ドイモイ(刷新)政策によって経済が開放され、ホーチミン市には急速な都市化の波が押し寄せます。

戦火や貧困から逃れるため、多くの人々が「安全な都市」としてサイゴン(現在のホーチミン市)へと流れ込みました
しかし、爆発的に増えた人口に対して、公的な住宅供給はまったく追いつきません。

人々はわずかな空き地を見つけては自ら家を建て、そこへ家族や親戚を呼び寄せました。
こうして家が密集していく中で、家と家の間に残された細い隙間が、やがて人が通る「道」になっていきます

その小さな道が枝分かれを繰り返し、現在のホーチミンに見られる「アリの巣」のようなヘム(路地網)が形づくられていったのです。

「ヘム文化」の特徴

ホーチミン1区、ブイビエン地区のヘム

ヘムは単なる「裏路地」ではなく、一つの完結した小社会(マイクロコミュニティ)です。

路地をリビングや食堂、作業場として共有しています。

ベトナムの伝統的な細長い家(チューブハウス)は風通しが悪く、玄関を開け放っているのが目立ちます。

そのため、家の塀に囲まれた細道ですが、「オープンな雰囲気」が漂っています。

さらにヘムの中には、飲食店、理髪店、さらには小さな寺院まで存在します。

路地の中に一つの村が存在し、また別の路地には別の村が存在するようなイメージです。

「ヘムの門(Cổng Chào)」による物理的・心理的境界

多くのヘムの入り口には、通りの名前や番号が書かれた「門」やアーチがあります

ブイビエン通り、一本道のヘム
ブイビエン通りからのヘムの入り口
CHILL SPAにいくヘムの入り口 ブイビエン通り
ブイビエン通りからのヘムの入り口

結界の役割

ヘムの門は、そこから先は「公道」ではなく、「自分たちのコミュニティの領土」であるという意味があるそうです。
それにより住人同士の連帯感と防犯意識も高まります。

夜間の閉鎖:

門があるヘムのアーケード
門がついているヘムの入り口

多くのヘムでは、深夜になると入り口の大きな鉄製のゲートを閉めます。これにより、夜間の外部車両や不審者の侵入を物理的に遮断します。

Khu Phố Văn Hóa は優良住民エリア

アーケードに書かれている「Khu Phố Văn Hóa 」は、ベトナム政府が公式に与える“優良住民エリア”の称号です。

単語を分解すると

  • Khu = エリア、区域
  • Phố = 街区、通り
  • Văn Hóa = 文化・モラル・生活態度

の意味。

ゴミを捨てない、騒がない、犯罪を起こさない、近所とトラブルを起こさない、党と行政のルールを守る」そういう住民が多い場所に貼られるお墨付きなのだそう。

観光客向けではなく、地元民向けの信用マークです。
ヘムに住む住人が、自ら規則を守り、生活をしていることがわかります。

コミュニティを守る「防犯」の役割

ホーチミン1区、ブイビエン地区のヘム

ヘムは基本的に袋小路であったり、非常に複雑に枝分かれしているため、通り抜けが困難です。

この複雑な構造は、外敵が簡単に入れないための「自衛」の手段でもあると言われています。

ホーチミンの表通りでは時折バイクによるひったくりが起こりますが、ヘムの中では稀です。
犯罪が起きたら即時に住民が出入り口を塞ぎ、犯人は逃げられないからだそうです。

住人にとっては勝手知ったる庭ですが、部外者には一度入ると出られない迷宮なのです。
この構造が、住民同士の結束を強め、家族の安全を守るシェルターの役割を果たしてきました。

住人の二極化

2026年、ホーチミンの不動産市場は価格上昇が続いています。
ヘム内の住宅は、従来の住人と、外国人やオフィス用の「高級化」の二極化が進んでいます。

  • ローカル向け(素朴な1部屋): 月額 約8,000円〜2.5万円。
  • 外国人やオフィスなどの改装物件: 月額 約5万円〜10万円。

1階をカフェに、2階を外国人向けシェアハウスに改装することも流行っているそうです。


ホーチミン1区のヘムは立地がとても良いので、「ここに住みたい」と思う気持ちもわかります。

私も、不思議な魅力のある空間に吸い込まれそうな気持ちにもなりました。

しかし、代々作り上げてきたこの雰囲気が壊れてしまうのは悲しい気持ちにもなります。

観光客として歩くときの注意点

ホーチミン1区、ブイビエン地区のヘム

飲食店が並ぶ賑やかなヘムもありますが、基本的には「住人の生活空間」です。

  • 家の中などを無理に撮影したり、アップロードしない
  • 夜遅くや、明らかに私有地の奥には入り込まない
  • 騒がず、立ち止まりすぎない。

このような配慮をした上で通れば、ヘムはとても静かで、危険ではない場所です。

今後、区画整理が進み、こうしたヘムも近代的な建物へと姿を変えてしまうでしょう。
観光の合間に横にある細道に気付いたら、Googleマップを片手に覗いてみてください。


撮影したヘムの場所

今回撮影したヘムの地域は、ブイビエン通りと、9月23日公園の間のヘムです。

Googleマップのスクリーンショット
※地図画像は Google マップより引用

Googleマップ:https://maps.app.goo.gl/eYK6k99ABuQMKYjQ7




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